屋 根 裏 画 廊
 編集 : くれ はるお
MASATOSHI KUBOTA
窪田征俊・・・・・・新しい情感の創出 宇宙人捕獲される

 透明アクリルに挟まれて展示されているこの作品は透明アクリル板も含めてひとつの作品として鑑賞すべきものにも思える。内側に挟まれた作品そのものとアクリル板の形状、四隅のボルトの配置が美しく、背面のコンクリート壁に心地良く調和してすがすがしい雰囲気を発散する。

 但し、この作品をいままで眼にし、慣れ親んできた作品と同じ見かたで見ることができない戸惑いを誰もが感じるだろう。だが、それをCGで作成された作品だからという理由だけで片付けるのは安直過ぎ、作家の強烈なメッセージを見逃してしまうことになる。

 完璧な形状と全く乱れのないグラーでーションはCGによってのみ成し得た技であり、これを作家の美意識によって各所に配置した極めて単純な構成である。実はこの作家は、人間的温もりを断固拒絶しているのであり、CG利用の目的はその機械的完璧性だけにある。CGに対してそれ以上の機能は求めていないのである。

 本来作家の手作業から生まれるものはその手法に区別されることなく、直線であれ、曲線であれ必ず作者の情感がこめられているものであり、鑑賞する側は自身の内面に一致或いは近似した部分を見出して情動が刺激される感覚を味わうものだが、この作家は個々の形状に作品を観る側との情感の一致を故意に拒み、それを作品として我々の前に差し出したのだ。

 これを無謀と見るか、優れた断行と見るかは鑑賞する側の判断によるが、この作品に何かを感じ、その前に立ち止まって見入ってしまったとすれば、既に作者の術中に捉えられたことになる。

 作品を観る側との情感の一致を拒み、それまでにない新しい情動を鑑賞する側の心に創出させようという試みは、現代音楽の世界で、特定の調(ちょう)に束縛されるのを嫌い、それでいて統一感のある曲を作ろうという12音技法にも似ており、これを平面アートの世界で大胆にも敢行したという行為に賞賛を送りたい。 ( 文:くれ はるお

    

ロボカーでドライブ
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 2014年 東京芸術劇場 アトリエイーストの高さ4mの壁面に展示された作品です。  各ポイントをクリックすると詳細表示されます
作者の筆が思うがままに語るドラマが展開しています。