屋 根 裏 画 廊 TomHero Art Gallery..
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TAIICHI KANOU
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狩野 泰一 ・ ・ ・人物画の変遷 | |||||||||
作家がひとつの種類の対象を描き続ける時、往々にして作品が観念化し、いつしかその作家自身しか理解不能な無の境地に至ってしまうという例が多いように思う。 東洋思想に裏付けられた水墨画のような世界ではそういったことが作家としての到達点とみる風潮が強く、晩年には色即是空の世界に遊ぶ大作家をファンが連呼して褒め称えるといった光景が見られる。 但し、洋画の世界ではこれとは裏腹に長年一種類の対象を追い続けた結果、作品が空洞化し陳腐な仕上がりを呈する結果になってしまい易いというのは、洋画世界の基盤に東洋思想に共通するものがないからであり、制作材料そのものも無の境地を目指す水墨画の世界とは全く異なる。洋画の画材は現実の情景をより美しいものとして彩色することを目的としているものであり、水墨画のそれとは根本的に異なるのである。 ところで作家狩野泰一の場合、長年人物画を描き続けながらも上記のような懸念を微塵も感じさせないのは鑑賞する側にとって極めて嬉い限りである。年毎に作品は変容を重ね、彩色は豊かになり、2015年の作品は顔だけではなく上半身を描くに至りもはや顔のない平面上の立体像になったが、立体としての陰影を数種類の彩色によって置き替えるという離れ業を駆使しているようにみえる。 作者の豊かな彩色技法が健在である限り、無の境地に陥ることなく、鑑賞する者をこれからも楽しませてくれるものと安心していられる頼もしい作家である。 |
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