屋 根 裏 画 廊 特 別 作 品
   編集:くれ はるお
SYUJI ISHIHARA
  石 原 収 二 〜神々以前の『意志をもつ存在』
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 真っ青な海からにょっきりと生えた氷山のような岩の固まりとその上を漂う雲の切れ目から見える空が描かれており、誰もがこの情景を美しい世界と感じるだろうが、それとはうらはらに異質な感覚も抱くだろう。それはこの情景がかもし出す雰囲気を持っている情景を我々の意識の中に見出すことが難しいからだ。

 確かに天地が分かれて上部は空で下部は海であることに間違いはない。しかしここにあるのは神々以前の世界である。だから我々が共通して認識している情景との一致を確認しづらいのだ。

 神話や伝説の発生は自分達のアイデンティティーを確立、正当化し、同属人種の絆を強めようとするのがその狙いだが、物語の構成はどの神話も極めて酷似している。それは人間本来の魂が意識のなかに神話の世界を構築したいという願望を共通して保持していたからである。その結果如何なる世界にも創造神が現れ、それなくして世界を語ることは出来なくなる。ヨーロッパではギリシャ神話や北欧神話が語り継がれ、日本では古事記が語り継がれている。科学者の間では今後暫くはビッグバンが語り継がれていくことだろう。

 ところがこの作者は果敢にも神々以前の世界に踏み込んだのだ。それは神々による束縛のない世界である。この生(なま)の自然に対して、人間の魂は驚異と畏敬の念を抱くことを余儀なくされ、至るところに自然の意志を見出す。『意志をもつ存在』とはこのことだ。

 但し、気をつけないと自然崇拝の罠に陥る可能性があるが芸術家としての感性はこれを嗅ぎ分け作品という成果物を仕上るに至る。

 この世界は作家が創造行為を実践していく上で最良の場所である筈だ。神々と同様の立場で事物を創造できるからである。(文:くれ はるお )
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