屋 根 裏 画 廊
兵 藤  桂 子 『 翔 』・・・・・メルヒェンへの誘い 

 曼荼羅を思わせる構図の丁寧に仕上られた美しい作品であるため工芸品のような風合いを放っているが、じっと見ていると色彩の奥から懐かしさを伴いながら滲み出るほのかな優しさに包まれて作者独自のメルヒェンの世界へそっと誘われる。

 ・・・気がつくと朱色の円に沿って視覚を徐々に回転させている。そしてどうしたら人はここまで優しくなれるのだろうと考えてしまうが、依然として視覚は朱色の円に沿って回転している。

 ”美しい”という言葉はそれだけでは月並みな表現で、この作品のように優しさが心に染み入るような美しさの場合、どのように表現すべきか、実はとことん迷ってしまい、頭の中に記録されている関連用語を自分流に検索するが得心できず、挙句の果てに小林秀雄の名言を思いおこすに至る。

 『美しい花がある。花の美しさなんてありやしない』

 美しいものはただ美しいと表現すれば良いのであって、その美しさを詮索しようなどという行為は、例えばダイヤモンドが美しい理由をその成分や生成過程に求めるようなもので、本来の目的から逸脱したところで無理やり押し付けがましい結論を導き出す行為に等しいようだ。

 年寄りが盆栽や掛け軸を見て楽しむように、小さな子供が秘密の宝に夢を膨らませるように、もしこの作品が自分の手元にあったらいつも眼の届くところに置いて眺めて暮らすかもしれない。

( 文:くれ はるお )・・・・・
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